2000/11/1  9.生分解性プラスチックのお話(基礎編−その1)
最終更新 2006年4月20日 
 
さてさてお待たせ?の生分解性プラスチックのお話である。
まずは前例に倣って予備知識から始めることとしよう。
生分解性プラスチックとは、
「使用状態ではその製品、またはプラスチックとして使用目的に必要とされる十分な機能を保ち、廃棄された時には土中または水中の微生物の働きにより、より単純な分子レベルにまで分解されるプラスチック。」ということになるだろう。
プラスチック=高分子と言っていいと思うが、生分解性プラスチックはその高分子が個々の構成分子レベルまで、平たく言えば水や二酸化炭素まで分解されるということである。ここで言う「より単純な分子レベル」とはそういうことを指す。(注記参照)
但し一般には廃棄された時、肉眼で他の砂や土の粒子と見分けがつかなくなるほど小さくなれば、「分解された」と認識されるだろう。
まあ細かく言ったらキリがないので、自然界に与える影響を無視出来る、または安全性が保証されるとすれば、後者の認識でも当面問題ないと判断しよう。
その意味で安全性の保証は生分解性プラスチックに不可欠な要素と考える。
一般への生分解性プラスチックの登場はおよそ30年前に遡る。
イギリス・旧ICI(現ゼネカ社)が「バイオポール」として上市したのが最初である。
バイオポールは「アルカリゲネス・ユートロファス」という水素細菌の一種が、有機物を餌に体内に蓄積するポリエステルを取り出したものであり、いわゆる「微生物産生系」と呼ばれる理由はここにある。
この素材、素人目にもちょっと想像をたくましくすると、ちっちゃな微生物をいくら集めたってどこまで大量生産出来るの?っという疑問が浮かぶ。
実際、登場前後の価格はキロ当たり日本円で万単位ということだったらしく、かなり特殊なプラスチックと言う認識は否めなかった。
もちろん、その後様々な企業努力、生産技術の進歩により価格は飛躍的に改善したことを忘れる訳にいかない。
現在事情によりこのプラの入荷は難しい状況だが、近い将来、先端技術を背景にあっと驚く大復活があるかもしれない。
生分解性プラスチックの日本での愛称は「グリーンプラ」とも言う。
これは10年ほど前、当時の通産省が一般から募集した愛称コンクールの中から選抜されたもので、あまり定着したとは言えないが一応公式の呼び名でもある。
ちょっと裏話になるが、この言い出しっぺ、実は私なのである。
私が某会社で研究を始めてすぐ、業界では汎用プラ、エンプラなどという呼び名が定着してるのだから、生分解性プラスチックにも分かりやすい愛称があっていいだろう、と某氏に提案したものである。
それが、その氏から通産省への再提案という働きかけとなり愛称募集を行うこととなった。
もちろん当時私も応募したが・・残念ながら・・・・ ^^;
グリーンプラという愛称には今でも賛否両論有るようだが、なるべく生分解性プラスチックと併記するよう心がけましょうね。
ネッ!業界のみなさん。言い出しっぺのお願い m(_ _)m
おっと!私も「グリーンプラのお話」にしなければ・・・・再 ^^;
 
−−つづく−−
 
(注記) 2000/11/3
誤解を生じるかもしれないので追記する。
生分解性プラスチックの高分子そのものが(機械的に)バラバラとなって、直接水や二酸化炭素になる訳ではない。
生分解とは、いったん微生物に餌などとして取り込まれたプラスチック分子が、その微生物の行う代謝の結果として水や二酸化炭素となって排出される訳である。
 
Home      Column−index