2001/5/20  15.生分解性プラスチックのお話(基礎編−最終回)
最終更新 2006年4月20日 
 
「なんだよー、全然ダメじゃん。」
ってな声が前回から聞こえてきそうな基礎編最終回。
 
生分解性プラスチックだからといって、その「生分解性能だけに期待して自然環境中に廃棄(埋め立て)又は放置処理は出来ない」、と前回述べた。
もちろん可能性の問題であってそれが現時点での話とはいえ、ずいぶんガッカリした方もいたかもしれない。
私が懸念するのは、誤解や思いこみから過剰な期待が発生した際、それが裏切られた(または期待外れ)と判断された時の結果についてである。
これまで単に素材ばかりでなく、様々な構想や製品が泣いてきた。
もちろんホントにいい物は生き残ったのかもしれないが、売れて普及することと、その素材や製品の優劣が必ずしも一致しないことなど良くあること。
これまでのコラムを読んで過去には当方に対して、生分解性プラスチックのマイナス面側(未だシステム構築されていない部分)から書かれすぎていると批判を受けたこともある。
しかし、事の善し悪しはともかく、売り手側の宣伝文句には批判的な評価など出て来ないのだ。
そしてそれらが知られた時、世間の反応は「手のひら返し」となる。
実際、これまでも述べてきたように、生分解性プラスチックには実に誤解が多い。
新素材新製品の発表・構想または発展期にあって、その利点ばかりが強調されがちなことは否めない。
たとえそれが売り手側の本意ではないとしても、結果的にそれらは誤解を与えるような宣伝ともなり兼ねず、正しい判断の妨げとなる恐れさえ否定出来ないだろう。
 
さて、それでは最後に生分解性プラスチックに対して、現時点での現実的処理にはどのような方法がもっとも安全且つ効率的であろうか?
下にいくつか考えてみた。
1.リサイクル
繰り返し述べてることではあるが、現状ではほとんど理想論に近い。
しかし、理想は理想としてやはりリサイクル利用を第一に上げなければならないだろう。
そもそもリサイクル不能な素材であればあきらめもつくが、生分解性プラスチックは通常の使用状態において立派にリサイクル可能な素材である。
やはり第一に考えるべき目標はここに置いておきたい。
善し悪しはともかくお役所支配から逃れられない日本においては、経済産業省と環境省の協力(強力)タッグを望まざるを得ないだろうか?
2.コンポスト処理による堆肥利用
自然任せではなく、前項(⇒こちら)でいう「管理された環境」に近い処理方法として、生ゴミなどと一緒にコンポスト処理がある。
この件は以前にもちょっと触れ、私も最近までコンポスト処理には大きく期待を掛けており、実際に当サイトの掲示板などでもその趣意の発言をしたこともある。
ところが、どうも色々な本や詳しい方々からその手の話を見聞きしていると、なかなか難しい現実がありそうなことも明らかになってきたのである。
たとえばそれは、時間と量と需要の関係。
どれくらいで処理でき、どれほどの量が出て、ホントに需要はあるのか?
私の住むような田舎ならおそらく問題は無いだろう。
しかし、大都市圏などで毎日コンスタントに大量のブツがはけるのか?
それだけの需要がホントにあるのか?
たぶん「ノー」である。
今後食品リサイクル等による生ゴミ及びその堆肥化には、大変な量が予想されるらしい。
更に、化成肥料を1回蒔く間に、堆肥なら数回蒔かなければ同じ効果が出ない、という研究結果もあるらしい。(←又聞きだが)
つまり追肥という作業においては、単純に農家の仕事量が数倍となる恐れがある。
ただでさえ高齢化&後継者問題に頭を抱える日本の農業。
当然出来た作物はコストアップとなるが、果たして世の中はそのアップ分をそう簡単に認めてくれるだろうか?
たぶんこれも「ノー」である。
それでなくても高い国内農産物に対して、最近だって某国産作物などが国際問題になっているではないか。
必ずしも消費者の指向ばかりが原因ではないが、やはりより安い作物の方が競争力を持つ可能性が高い。
確かに、いわゆる有機野菜などが市場に出回ってる事実はあるが、残念ながらそれが主流になってるとは言い難いのだ。
3.消却処理(⇒お話しその4参照
燃焼熱量の低さと発生ガスに対しての安全性は、生分解性プラスチックにとってかなり重要な要素となるかもしれない。
極論すれば野焼きのような状態でも、生分解性プラスチックに関して有毒ガス発生などの可能性は少なく、むしろ多くはお菓子を焼くような香ばしい臭いがするのである。
(↑現時点では材料メーカーが組成のすべてを明らかにしている訳では無く、たとえば可塑剤や安定剤などから発生するガスへの懸念が残ることはお断りしておく。)
誤解を与えることが多いので消極的な選択(推奨してる訳ではない)と断っておくが、差し迫った現実問題として固まり状の生分解性プラスチックでは、当面焼却処分が妥当とも考えられる。
それは生分解性プラスチックでも、たとえば数mmの厚みがあるものは、完全分解までに普通年単位の時間を必要とするからである。
20〜30μのフィルムが先のコンポスト中において1日で分解しても、3mmの厚みがあれば100日掛かるかもしれない。(3mm÷0.03mm=100日)
単純な比較は危険としてもある程度厚みある板状のものとなれば、やはり堆肥として使用可能となるまでに月単位の時間が必要であろう。
つまりコンポスト処理では前述の量的問題と共に、少なくても数か月間は貯めておけるほどの大きな貯蔵熟成設備が必要となるかもしれないのである。
これは都市圏では不可能であることを意味している。
 
−−基礎編・終わり−−
 
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