000420  2.プラスチックのお話(その1)
最終更新 2005年7月20日 
 
今回から予備知識などとかっこつけて掲示板に予告したプラスチックの分類を話そう。と言っても訳わからん事を言うつもりはないし、化学の専門家でもないのでそんな知識もない。いわゆる一般的お話レベルの話である。ここでは主に熱可塑性、つまり高温で溶ける樹脂について説明する。
プラスチックはいくつかの方法で大きくジャンル分けすることが出来る。その中でまずはプラスチック自身の性能・性質や能力・価格等から業界で言われる三つに分けてみよう。
汎用プラ(汎用プラスチック)、エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)、スーパーエンプラの三つである。
 
汎用プラは
広く一般に使用されている極ありふれたプラスチック。今、あなたの周りを見渡して見えるほとんどはこの仲間のプラスチックである。汎用って言うくらいだから守備範囲はすこぶる広い。パソコンやディスプレイの本体ケース、テレビ・ラジカセ・掃除機など家電品のプラスチック部分、CDケース、リモコン、ポリ容器、ポリバケツ、ポリ袋などなど。とにかく全部と言っていいほどあらゆる製品に使用されている。
名前としてより具体的には4大樹脂とも言われる「ポリエチレン(PE)」、「ポリプロピレン(PP)」、「ポリスチレン(PS)=スチロール」、「ポリ塩化ビニール(PVC)=塩ビ」がある。これらでプラスチック市場全体の80%程度は占めるだろう。他に、先のテレビやラジカセなどの外装ケース類で多用される「ABS」も聞いたことくらいあるかもしれない。車の「アンチロック・ブレーキ・システム」とは関係ありませんよ。念のため。
ちなみに昔から透明な袋と言えば、いわゆる「ビニール袋」と相場は決まっていた。これはポリ塩化ビニールの頭を省いた呼び名なのだが、現在は従来の塩ビから大部分ポリエチレンに材料が変わっている。そこで通称として呼ぶなら差別化する意味でも今度は頭のポリを取って、「ポリ袋」と呼ぶ方が好ましい。現在目にするほとんどの袋はポリエチレン製のポリ袋に替わっているので、誤解のないようにしよう。
もう一つちなみに、塩ビはダイオキシン発生の原因物質として最近極めて肩身が狭い。しかしその優れた性質は多くの家庭用・業務用資材にも利用され、私たちの生活を豊かにしてきたのも事実である。この件については色々言いたいこともあるので、後々別項でお話しすることにしよう。
汎用プラはほとんど200℃前後で成形加工でき価格も安い。塩ビやポリエチレンのような軟質(それぞれ硬質もある)からアクリル(PMMA)やスチロールのような硬質まで性格は様々。比較的楽に成形でき、加えて安いとなれば大量に使用される訳である。まさに汎用なのだ。
エンプラは
汎用プラより各種能力に優れたプラスチックの総称である。成形温度は180℃くらいから300℃ちょっとくらいまで。概ね硬くて強靱、耐熱性も優秀なものが多い。得意分野はエンジニアリングという呼び名からも、前述のような特徴からも想像出来るよう、強度が必要なビデオやラジカセなど機構部を持つ製品の部品として使用されることが多い。スイッチやヘッドフォンを差し込むジャック、パソコンや通信機器の各種コネクタ等がそれで、私の本業はそれらの設計業務でもある。他に靱性や耐熱性を生かした自動車バンパーやエンジン周りの部品も有名。また、食器等も量としてはけっこうなものだったようだが、最近は環境ホルモンですっかり有名になり旗色が悪い。ボトルで有名なPETもこの仲間(環境ホルモンとは無関係)でその優秀性は実証済み。
具体的な樹脂名としてはかなり種類も多く「ナイロン(PA)」、「ポリアセタール(POM)」、「ポリカーボネート(PC)」、「ポリブチレンテレフタレート(PBT)」、「ポリエチレンテレフタレート(PET)←これがペットボトルの本名/頭文字の読みが一般にも浸透した珍しい例だ」、「ポリフェニレンエーテル(PPE)」などなど。
いずれも前述分野の他、特に耐久性、耐熱性、耐薬品性、及び強度的に大きなものを要求されるような使用法では独壇場である。価格的にもかなりこなれてきて、家電製品や自動車の性能アップ、価格低下に果たした役割は極めて大きい。プラスチックの加工性の良さはそのままに、性能対価格費(C/P値)を押さえられる利点がある。
スーパーエンプラは
文字通りエンプラのスーパークラス。超硬度、超耐熱性、超靱性、超耐薬品性などの用途に、金属の代替え材料などとしてかなり普及が目立ってきている。成形温度は250℃〜400℃くらいまで。前述のエンプラもそうだがガラス繊維や炭素繊維との複合材として使用されることが多く、プラスチックとは言っても叩けばガラスや金属のようにキンキンという音がする。逆に言えば廃棄後の処分に困る材料でもあり、環境面ではあまり大手を振れないのが玉に瑕。そういう材料だから一般的に目に触れるような分野にはほとんど使用されない。出回って来たとは言え、やはりその多くが特殊分野には違いない。
ついでに価格の高さもスーパー級で、上は1kgあたり数万円以上。ちなみに汎用プラは100〜500円/kgくらい。エンプラが350〜1000円/kgってところである。対してスーパーエンプラは800円/kgから上は前述のように数万円/kgとなる。
樹脂名は「ポリフェニレンサルファイド(PPS)」、「46ナイロン(PA46)」、「変性ナイロン」、「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)」「フッ素樹脂」、「液晶樹脂」等が有名どころ。これらのうち前2者はそろそろスーパーの枕詞を取ってもいいくらい、業界では一般的になりつつある。
 
さて、以上の3種の他、ここに第4のジャンルが登場した。言わずもがなの生分解性プラスチックである。
待て待て焦るな焦るな。まだ話はこれから・・・・
 
−−つづく−−
 
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