Columbia/No.115 卓上蓄音機
最終更新 2012年 8月 1日
 
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コロンビア卓上機のフラッグシップ、「No.115」です。
コロンビア初期アイデンティティーの一つ「開閉式ルーバー」をホーン開口部に設け、比較的小型でありながら板金製リエントラントホーンを内蔵した代表機です。

コロンビア110番台の卓上機は、「板金製リエントラントホーン+No.9 サウンドボックス」の蓄音機を数種生み出します。その中でも卓上型としては比較的コンパクトながらしっかりしたマホガニー仕上げの高密度筐体(上蓋はオーク?)で製作され、先のルーバーを装備するフラッグシップがこの No.115 です。
このセット以降高コストのルーバーは姿を消し、良く見るサランネット仕様へと変化していきます。ニッポノホン時代からの開閉扉というコロンビアのコンセプトも、最終型と言えるここで一つの頂点を迎えることとなるのです。以降、前述のサランネットへの外観変化と共にホーンはより生産性の高いストレートホーンへ、サウンドボックスも新開発の No.15 へと変わっていきます。
主な仕様(自己調べ)
筐 体 実測/幅44cm×奥行き48cm×高さ34cm  開口時高さ約65cm  重量約15kg
ターンテーブル 12インチ(約30cm)
機 械 2丁ゼンマイ
サウンドボックス Columbia No.9
ホーン  板金製リエントラントホーン
時 代 1920年代〜30年代前半頃(大正期〜昭和初頭)
その他 初期型(シリアル2465)/オートストップ機構&手動ブレーキ付き
 
 
入手時外観
入手時外観

外観に目立つ破損は無いものの、全体にくすんでけっこう小傷がいっぱい。そんな状態でよく反りや隙が出なかったなーと、作りの良さに逆に信頼感も高まろうかというもの。
蓋を開けた内部はツヤも残りきれいでした。蓋裏のロゴや奥の金文字注記はバッチリですが、パネル面手前にあるはずの型番シールは粘着剤跡が残っているだけ。このセット正しくは「No.115-B」だと思います。「No.115-A」は確かストレートアームだったような??

一応動作品での入手ですがそれは回るということだけで、サウンドボックスを降ろすとすぐターンテーブルが止まっちゃうとも。そうですかそうですかと、原因を見当つけての入手です。
 
入手時外観2
入手時外観2

ルーバーは右側面のツマミを回して開閉します。中には左右にリエントラントホーン開口部が鎮座。
底面4角の足は磨り減ったというより長年の重さで潰れた感じ。木ネジの頭の方が飛び出し気味で、このままでは床を傷つけてしまうと早速フェルトを貼り付けておきました。
その底板中央付近には大きな油シミがあり、近くのラベルにはシリアル番号と思われる「No.2465」とスタンプされています。どうやら初期セットのようです。
 
サウンドボックスとアーム周り
サウンドボックスとアーム周り

コロンビアのサウンドボックスと言えばこの No.9 が代表でしょう。一般的に見かけることの多い後の No.15 は、明らかにこちらをベースにやや廉価を計った感が否めません。切削加工と思われる(確証はありません)しっかりした金属ベースのやや重いサウンドボックスですが、後のダイキャスト製と違いヒビ割れを起こすことが無く大きな利点と言えます。音質は穏和でトゲトゲしい部分が無いため非常に聴きやすく、低〜中音重視のサウンドボックスと言って良さそうです。

アームは直前のストレートアームから改良された、折り畳み式としてはコロンビア1号機になると思われるやや大きなアームです。コーティングされたように埃となっていましたが、目立つ傷みはありません。かなり長い期間眠っていたのでしょう。

オートストッパーはコロンビア独自の非常にシンプルな方式です。このストッパーはほとんど姿・形を変えず同社蓄音機最後期まで使用され、各社からなんちゃってコロンビアタイプとして類似品を多く作り出します。基本設計の優秀性を示すものでしょう。後年有名無名の各社からやたら複雑形状のストッパーが次々出ますが、筆者的には帯に短したすきに長しで機能的には大差ありません。単純形状の抜き曲げ板の組み合わせで部品点数が少ない=故障しにくく整備しやすい上に廉価。まさにシンプル・イズ・ベストの代表ではないでしょうか? 各社に真似されたのもなるほど、ですね。
とは言え弱点もあり金属部は確かにいいのですが、ターンテーブル軸の黒プラスチックに欠けや破損の見られることがありますのでご注意を。
 
手動ブレーキ、スピードコントローラなど
手動ブレーキ、スピードコントローラなど

上蓋開閉のステーは、ここまでしなくてもってくらい頑丈な作りです。幅19mm、板厚は実に3mmもあり、当時の高級機に共通したものです。さすがに後年は簡略化されました。
針箱はその横に並んで2個所。右側は使用済針用のドーナツリングが付いています。
中央上の手動ブレーキはオートストッパーのおまけの感がありあり。後年までずっと使用される一番廉価なタイプ?!

右のスピードコントローラーも後年各社に真似されたよく見るデザインです。下写真のように回り止めした螺旋の中でコアが回ることにより上下動します。実はレストア時の防振ゴム交換により機械がこれまでより1〜2mm下がり、ブレーキパッドの磨耗も手伝って78回転に調整した時可動域いっぱい近くまで下げる必要がありました。そのためナットを一つ入れてツマミの操作範囲を広げています。この写真はレストア後の物ですが、機械側のブレーキレバーもかなり板厚のためそれを曲げるよりも簡単な方法を選びました。
 
板金製リエントラントホーン
板金製リエントラントホーン

ビクターが木工なら我々は板金で行こう! っと、言ったかどうか? コロンビアの声が聞こえてきそう!
そんなライバル心ありありのコロンビア流板金製リエントラントホーンです。

このホーンではアームからの音道が斜め下に延びて後部中央から前に走り、二手に分かれながら後ろ、前と向きを変えて開口部で合わさります。サウンドボックスから全長1.5m弱の長い音道を確保することにより、低音再生に有利で且つ大音量を作り出している訳です。
上述表中の筐体寸法は一見それなりに大きく見えますが、それはがっしりした台座部分を含めているからに他なりません。ホーンの収まる箱部分に関してのみ計れば、外形寸法で37×42×18cm程度しかありません。ちょっと幅広なポータブル型程度でしょうか? そのコンパクトな筐体内で巧みに機械を避けながら長尺のエクスポネンシャルホーンを実現する、そのコロンビアからの一つの回答がここにあります。
 
入手時機械
入手時機械

だいぶグリスべっとりの機械でした。
底板に大きな油シミがあったのも、ここから垂れたグリスが鍾乳石のように山になって固まっていたことによります。機械の近くにはその底板にあったのと同じ 「2465」 のラベルもありました。ガバナーの板バネが重錘の外側に付く以前の、コロンビアでも古いタイプの機械です。クランクの逆転防止はこれも後年のコイルスプリングではなく、しっかりラチェットを使用しています。逆転防止はこちらの方がいいですよね。カッコイイし確実だし修理も簡単だし。

いずれにしろ機械は同時代の高級機の中では比較的小形でありながら、大変力強く静かに回り目立つ問題はありません。付け過ぎのグリスを軽く洗浄し、あらためて筆者流に注油をしてOK!
 
機械防振ゴム交換
機械防振ゴム交換

すでに既出の蓄音機でも毎度のことですが、この種のゴム類は使用状況の如何に関わらずまったくの消耗品です。こればかりはゴムの性質に関わる宿命でもあり、交換以外どうにもなりません。このセットでもパネル裏、機械側に残った残骸を丁寧に取り去り、今回はケーブル通しのゴムブッシュをワッシャーで挟んで代用としました。
欲を言えばシリコンゴムか軟らかめのウレタンゴムでもあればいいのですが、なかなか希望するような物が市販ではなくて・・・・^^;
 
機械周り組み上げ
機械周り組み上げ

ワックス掛けしてきれいに仕上げたパネルに機械を取り付けます。
中段は回転中のガバナーをストロボで止めた写真です。右の写真では遠心力で重錘が開きブレーキディスク(小ディスク)にブレーキの接触している様子がよく分かると思います。間の小写真は止まってる状態のガバナーで、ディスクとブレーキの間に隙間の空いている様子が分かります。
上がったパネルを筐体に置き、ターンテーブルを載せれば機械周りは完了!(^^)(^^)

尚、オートストッパーは回転部の動きがやや重く、調整が必要でしたのでこの時点では付けていません。・・・・って言うか、けっきょくその後も付けず終いで現在に至っています。実のところ筆者の場合、再生後に軽く盤面清掃するのが作法というかローテーションというか・・・・っで、止まってしまうオートストッパーはなんて言うか無用の長物!?でして・・・・^^; 手動ストッパーがあればオートはほとんど使うこと無いんです。
 
アーム補修
アーム補修

変な棒の刺さっていたアームですが、実はアームを折り曲げる時のストッパーとなる突起です。オリジナル部品が取れちゃったのか、余り上手とは言えない修理が行われていました
そこで、がたつきのあった棒を抜き取りサンドペーパーなどできれいに仕上げた後、ハンドタップでネジを切ります。この穴はバーリングになっていてねじ切りに都合が良かったためです。そこへネジを取り付けて完了。先ほど切った雌ネジは最後まで切り込まずテーパーを残しておきましたので、ネジは途中から適度な抵抗がありしっくり緩むこともありません。・・・・もちろんペイントロックはしておきましたけどね。
 
試聴
試聴

一連のレストア完了後試聴を行いました。

このセットのサウンド作りが名器 No.9 サウンドボックスを、最大限に生かすべく設計されたものであろうことは明らかです。そしてオリジナルの組み合わせであるその能力を、まさに余すところなく発揮した見事なうたいっぷりでした。No.9 のリファレンスとしてホーン・筐体共に、明らかに最良の組み合わせと言って間違いありません。それは暖色系のしっかりした低音に支えられた柔らかくも厚い音色が特徴です。特に同社に多い歌謡曲を含む女性ボーカルレコードをかける際、一度このセットで聴いてしまうと他はもう考えられません。No.9 を使用しコロンビアレーベルの自社レコードを最良の形で鳴らしきる、そんな設計だったのでしょう。
筆者の好きな女性ボーカルを既出 HMV 101と共に、もっとも雰囲気よく聴かせてくれる音色でした。
 
さて、よく音量調節可能な・・・・などと説明されるルーバーですが、実際の操作ではほとんど音量には関与しません。っと言うのも、確かに閉め切る瞬間フッと音量が小さくなったとは感じますが、ツマミ操作に伴い見た目のスリット幅が大きく変化する中で聴感上の比例的音量変化はほとんど感じられません。むしろその間の感覚は直接音と間接音の割合からか、それなりの音場調整に有効かも知れません。

モノラルで音場もねーだろ!なんて思われる方も多いと思いますが、蓄音機の真横や後に居てもしっかり聴かせる効果は十分にあります。もしショップでならこの蓄音機を中央に、聴衆が取り囲んで聴いてもまったく問題ないかもしれません。それほど全方位的な音場感が得られます。
開いた時のルーバー上面は下写真のようにかなりラウンドしており、裏側は平面となっています。音が当たった時そのR側では拡散、平面側では反射を行い、それはポータブル機の蓋のようにホーンの延長として、あるいは音響反射板(音響レンズ)として作用していると考えられます。元々平面側はホーンへ向くように作られておらず、つねにR側がホーン側へ向くことからも意図的にそう作られたことは間違いないでしょう。

ちなみに筆者は45〜60度前後と、かなり上向きにして聴いています。実際、これくらい上に向けると部屋のどこにいてもまったく支障なく聴けるだけでなく、しっかり音源の方向まで(どこに蓄音機があるのかも)明瞭に分かるから不思議なものです。この部分に関してのみ言えば明らかに同時代のビクター機を凌駕しています。
是非どこかで試聴機会を作ってみて下さい。予想外の音にカルチャーショックを、あるいはセッティングに何らかのヒントを受けるかも知れませんよ。
ルーバー詳細
 
ところで当初、針を置くとターンテーブルが止まっちゃうと言う問題ですが、思った通りサウンドボックスが所定のロック位置まで嵌め込まれておらず、垂直に立った針がレコードを引っ掻きながらの再生状態でした。おまけに針も思いっきり磨り減っていて、これじゃ止まっちゃうよね!
 
代表3機種大きさ比較
手持ち卓上機との大きさ比較です。
左からVictor VV1-90ANKER AMATI、Columbia No.115です。VV1-90も卓上機としては決して小さくないのですが、それにしてもANKER AMATIの大きさとコロンビアの可愛さが分かりますよね。
 
新規追加 2010年 5月30日
 
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