南牧村最高峰/余地峠より広小屋山

最終更新 2003年8月18日
 

南牧村最奥「なんもく村自然公園」のバックに聳える同村最高峰「広小屋山」を訪ねる。

紹介する余地峠・矢沢峠を経由する県境尾根ルートは、一部を除きヤブ+笹のまったくの廃道。

それでもこのルートは現在この山に残された唯一の踏破ルートであり、限られた熟達者の領域。

 
大岩・碧岩とククリ岩・二子岩
余地峠林道下部より大岩・碧岩・タカノス岩(左)と高くククリ岩と二子岩(右)

 

グレード  4  判断基準
ルート 余地峠林道入口→余地峠→1410m峰→矢沢峠→広小屋山→矢沢峠→大上林道→登山口
総歩行時間
(休憩含まず)
4〜5時間程度。但し、ルートファインディングを誤ればその限りでない。
登山適期 4月中旬〜5月下旬 及び 10月下旬〜12月中旬
地形図  海瀬(かいぜ)
駐車場所 「なんもく村自然公園」管理棟より約100m手前、左路肩駐車スペース4〜5台。

 

ガ イ ド (1999年12月4日現在)
1. 登山口は「なんもく村自然公園」の管理施設より100m程手前から右に登る林道。雰囲気良い林道1時間程で余地峠着。
途中、標高1080m標高点手前の右カーブに、通年こんこんと湧き出す清水がある。但し、念のため下から持っていく用意も忘れずに。
  
左) 余地峠への林道入口  車を左路肩の駐車スペースに置いて、右の林道へ入っていく。
中) 1080m標高点分岐  右は象が滝へ、余地峠へは左に進む。
右) 旧余地峠道分岐  林道を道なりに歩いても余地峠に通じるが、旧道(写真の右)に入ればショートカットも可能。
 
2. 余地峠は小広い広場状。南面南牧側には「馬頭観世音」の石碑や地蔵が数体祭ってある。
佐久側峠道は2003年夏現在、ダム工事中のため車両通行は出来ない。
 
左) 余地峠林道上部  この後間もなく熊と出会う。熊は笹のきれた右下斜面から振り返ってこちらを見ていた。
右) 余地峠の馬頭観世音碑  苔むしたいかにも古そうな石碑や地蔵が数体ある。
 
3. 峠から南へ県境尾根に入る。ヤブ気味に始まるが歩きやすい所をとにかく高い方へ登って行く。最初のピークから始まる尾根道は明瞭。くの字に曲がる1405m峰直前だけちょっと笹が深い。
この先、標高1400m尾根からの下降路はちょっと怪しい。ここは尾根筋の深い笹を避け、佐久側の薄いヤブをこいで鞍部に下る。笹の薄い部分を縫って1410m峰の上りに入ると南牧側に好展望が得られる。
 
左) 尾根上の道  標高1400m尾根上は概ね快適。膝丈以下の低い笹の道が続く。
右) 1410m峰手前鞍部から東面の展望  右奥に遠く稲含山、右下に自然公園、西上州の山々も一望の下。
 
4. 急登で笹を分けながら1410mピークに着く。展望は木の間越しだが、小広く開けた気持ちのいいピーク。
矢沢峠方面へは下り初めの方向決定が難しい。本来の尾根道は県境伝いなのだろうが、すっかり笹に埋もれてしまった。
ここはやや佐久よりに踏み出し、すぐ左下に下って行く。西側への尾根に導かれないよう注意。左手の県境尾根からも離れすぎないよう注意。

1410m峰山頂  小広く開けた山頂からは木の間越しだがまずまずの展望。
 
5. 矢沢峠は緩く下っていくと突然ビンやカンが転がっているのでそれと気づく。地図上の矢沢峠位置より少し余地峠よりで、左手にやたら立派な峠(佐久町製)の道標がある。
尚、峠道は佐久側・南牧側共ほとんど道跡さえ同定出来ない。特に南牧側は背丈を超える笹にすっかり埋もれ、道を外さず下りきるのは困難な状況。まして登りなど事実上不可能と言っていいだろう。

矢沢峠  峠道は消えても標識は立派?。南牧(群馬)側は深い笹にすっかり埋もれた。
 
6. 広い尾根を広小屋山方面に行くと間もなく、左から入り込む沢源流を回り込む。スプーンで削り取ったような源流は峠道に代わる下降路となるので確認しておく。
ここで深い笹を避け右に膝丈くらいの薄い笹原に入り、そのまま反時計方向に巻いていく。その後は左手の県境尾根から離れすぎない程度に適当に登りやすい所を登路としていく。

矢沢峠付近の笹原  峠付近より1410m峰を振り返る。この付近ルートファインディングに要注意。
 
7. 頂稜まで辿りつけば左手にポコンと周囲より高く盛り上がったコブがあり、その密生した笹の中に南牧村最高地点である御影石の標柱が埋め込まれている。ここは荒船山よりおよそ20m高い標高1460m程の広小屋山北東の肩にあたる。
 
左) 広小屋山北東の肩  標高1460mのコブ。荒船山より高い南牧村真の最高点はこの中にある。
右) 最高点の石柱  笹をかき分けるとコブの頂点に御影石の石柱が。
 
8. 南西の広小屋山山頂へは手前のコブで背丈を超える笹の密生をこいで進む。
山頂は笹もなく気持ち良い。展望は木の間越しだが晩秋から春先にかけてなら何とか可能。御座山や茂来山を前景に八ヶ岳など見える。さすがに西上州最西端に近く、他の西上州山岳よりも近く大きく見える。

広小屋山山頂  標高1484.4m。二等三角点の山頂は小広い。
 
9. 下降は先に確認しておいた沢源流へ笹を掻き分けながら15mほど急下降。スプーンで削り取ったような源流は尾根直下にも関わらず水が湧いていて、万が一の水場としても役立ちそう。
この沢の下降は終始非常に急傾斜だが滝はない。沢内の下降は鋭角的に尖った岩角や大岩小岩に注意しながら、特に浮き石と左岸からの落石にも注意が必要。同行者がいる場合は互いの落石にも注意のこと。
  
左) 尾根直下の湧水地  登りの際目星をつけた下降路となる沢の源流。尾根から笹をわずかにこぐ。
中) 下降路の沢  写真では分かりずらいが大変な急傾斜。滝は無いがガレ場のため落石には要注意。
右) 下降路の沢中下流部  沢の左右が広がってくると大上林道も近い。
 
10. 飛び出した大上林道反対側の路肩には6.5kmの林道標柱があるものの、さすがに峠道を示す道標はない。
後は舗装された大上林道を1kmほど下れば車を置いた登山口である。

矢沢峠道入口  大上林道の峠口。右のコンクリート壁横が入口。左のポストには6.5kmの表示がある。
 
注記)
1. 余地峠直前の林道で今回、熊と30mほどの至近距離で遭遇した。幸いこちらが見下ろす位置関係から、15秒ほどのお見合い最中も危険を感じることはなかった。結果的には非常に幸運であったが、遭遇前後の状況から「熊よけの鳴り物」が効果的であったのは明白。この手のルートでは必須のこと。
2. 余地峠以降、矢沢峠の道標以外は一切の案内・テープなど何もなく、自身のルートファインディングだけが頼りとなる。
尚、自然公園から矢沢峠への沢経由で山頂往復だけなら、2時間半ほどと思われる。
3. 大上林道大上峠には「矢沢峠へ2km」の道標がある。但し、この間の道は背丈を超える猛烈な笹の密林となり、余程の覚悟がないと事実上通過不能である。広小屋山側より望む同ルートの見極めもまったく困難であった。

大上峠から矢沢峠への縦走路  縦走路はすぐ笹に埋もれる。その後は背丈以上の笹の密林へ。

  

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