裏妙義/御岳東稜を登り失われた直登ルートを下降

最終更新  2011年12月20日
御岳東稜
御岳東稜

裏妙義・主稜線上の「御岳」が古くからの信仰の山であることはあまり知られていない。その御岳より中木川側に伸びる東稜に多くの石碑が祭られていることも、地元の人以外知る人は少ないだろう。

東稜は上写真でも分かるように中間部に険しい岩壁帯を持ち、一般装備のみによる下降は出来ない。もちろん登行にもシビアなルートファインディングと確保を要する。ここではその東稜を登り、裏妙義主稜から中木に至る忘れ去られた往時の御岳直登ルートを下る周回ルートを歩いてみよう。

毎度こんなルート紹介していいのかなーと思いつつ、行く奴はいないだろうと妙義の岩とヤブに慣れた物好き&熟達者向け。

 

グレード(個人評価)  H  1  2  3  4    U  /  判断基準
ルート 東稜取付→石碑の見晴らし→中間部岩壁帯→裏妙義主稜→御岳→旧直登ルート下降→登山口
総歩行時間(休憩含まず) 東稜約3時間、旧直登ルート下降約2時間。
登山適期 4月上旬〜5月中旬 及び 10月中旬〜12月上旬
地形図 南軽井沢
駐車場所 中木ダムまたは妙義湖付近の駐車スペース
注  記 東稜中間部の岩壁帯は標高差150mにおよび、シビアなルートファインディングを要する。誤ると下降を強いられ、ザイルの装備は必須である。核心部の紹介ルートはバリエーションとしての一例であり、現場の状況により各自で判断してほしい。
又、これも毎度の事ながら下↓のような大量の糞も見つけている。熊などには注意してほしい。
獣の糞

 

ガ イ ド (2003年5月10日現在)
 
  
東稜取付(↑左)
妙義湖方面へ向かう車道が妙義湖とダム側に別れるところが東稜の取付。いきなり杉植林の中の急登を登っていく。
第1石碑(↑中)
標高差100mほどで植林は広葉樹に変わり、小さな乗越を通過する。間もなく稜線上に高さ1.5mほどある大きな最初の石碑が現れる。この後、岩壁帯までの稜線の各所に10基余りの石碑が次々と現れる。
ヤマツツジのトンネル(↑右)
ゴールデンウィーク頃の尾根筋はヤマツツジやトウゴクミツバツツジが満開。
 
  
石碑の見晴らし(↑左)
高さ4mほどの岩場に行く手を塞がれるとその上が岩峰上の小広い見晴らし。ここにも二つの石碑がある。普通はその岩峰を左から巻いて時計回りに登り上げるが、直接岩場を登ってもOK。
見晴らしより中木方面(北側)の展望(↑中)
見晴らし上は北側の展望が良い。見晴らし岩峰の下りでは3mほどの垂壁があるが、手がかり豊富で問題ない。その後続く岩稜を登り上げると樹林の明瞭な道となる。
リッジ上より中部岩壁帯(↑右)
再びナイフリッジの岩稜を通過する。このリッジは向こう側で降りられるのか心配になるが登り上げて問題ない。リッジ上からは行く手に岩壁帯が望める。リッジを下ると前衛峰のような大きな岩壁に行く手を塞がれるが、ここは左から巻いて通過し中部岩壁帯下部に着く。
 
  
登路のルンゼ下部(↑左)
前写真で遠目には立木に覆われた岩壁帯も、傍らに立つと垂壁で直接登ることは困難。ここは岩壁基部を左に回り込み、写真の厚く落ち葉が積もったルンゼを登路とする。
ルンゼ中部(↑中)
ルンゼ内の中程には丈夫な立木があり一息。そのままルンゼ最上部を目指す。
ルンゼ最上部のトラバース点と立木(↑右)
ルンゼの最上部で右手にトラバース。ここにはちょうど大きな立木があって都合が良い。草付きへ出ると一旦右上へ、続いて左上に登り返す。ここでわずか2.5mほど、灌木と土の混じった岩場があるが東稜中でももっとも悪く注意を要する。垂直で岩質が脆く浮石も多く手がかりが遠いというやっかいな場所だ。よ〜く観察して丈夫な立木まで手が伸びれば、後は四肢を総動員して身体を引き上げて通過する。
 
 マルバアオダモ
岩稜上より妙義湖(↑左)
気分の良いリッジとなれば左右の眼下には妙義湖や横川方面が望める。
岩稜上のマルバアオダモ(↑右)
これまでの展望写真で白く見える花はいずれもこのマルバアオダモの花。毎年ゴールデンウィーク頃が盛期となる。
 
  
妙が沢上部の岩峰群(↑左)
岩稜上より妙が沢側には屹立する岩峰群が望める。
衝立岩(↑中)
岩稜を進むと目の前に大きく垂直の壁が立ちはだかり、一瞬ここまでか!と考えさせられる。衝立そのものの垂壁は直登困難だが、岩稜はこの衝立岩との間で1.5mほどの段差を飛び降りる。
衝立岩のトラバース点(↑右)
衝立岩は右に回り込むと写真の微妙な岩場をトラバースして草付きに立つ。このトラバース、大した高さではないのだが垂直の岩場であり慎重に通過。ここから岩との境目を登れば衝立岩上で核心部終了となる。ここまで岩壁帯の通過には単独でも初めてなら小1時間ほど掛かるだろう。
 
  
尾根上の踏跡(↑左)
岩場から解放され平坦になると横川方面に開けた見晴らしに出る。ここから裏妙義主稜線まで細い踏跡が続いている。
第1石門(↑中)
途中にはこんな小さな石門もあったりする。折角だから潜ってみよう。岩場が現れると踏跡は概ね妙が沢側を巻いている。中程にある顕著な岩峰基部には岩屋もあり、非常時には雨宿りくらいなら何とか。
木の間越しの山頂方面(↑右)
やがて傾斜が増してくると木の間越しに初めて山頂方面が視界に入る。最後の急登が始まる頃から胸丈くらいの笹も現れ、踏跡も不鮮明となるが尾根を大きくはずさなければ問題ない。
 
御岳山頂
御岳山頂
東稜から辿り着く石宮のあるピークは前衛峰(北峰)。御岳山頂は丁須の頭方面へ一旦下り登り返す。山頂には石碑と三等三角点がある。この日天気は良かったが春霞で展望不良。
 
  
旧道分岐(↑左)
旧道分岐は主稜を鼻曲がり方面に下った産泰山との最低鞍部にある。右の立木に黄色のペイント、左足下に次写真の標柱がある。
分岐傍らの石柱(↑中)
その標柱はこちら。「一一五」という刻印がある。
旧道上部の道(↑右)
思いの外明瞭(って言うか動物の踏跡がいっぱい)な旧道は産泰山東壁下を反時計回りに回り込み、その後緩い東稜を下りはじめる。すぐ現れる分岐を右に下り小沢を二つ渡った後、次の支稜を下り杉植林内へ入っていく。この最初の小沢を渡る付近より道跡は一気に不鮮明となり細心の注意を要する。ちなみに一つ目の小沢は下るには不向き。二つ目の小沢上流には15mほどで一直線のトヨ状の滑滝があるので、現在地の確認には良い判断材料となるだろう。どちらも水量はわずかで、特に二つ目は枯れてる場合もあるかもしれない。
 
  
植林内の石柱(↑左)
下草の刈られていない植林内はヤブで、道跡を見極め慎重に下っていく。概ねやや右寄りに尾根を目指すように下ることとなる。正解なら写真のような標柱や営林署の標識が時々現れる。地図上で目指すのは御岳沢左岸の等高線間隔が開いた緩い斜面である。
広場(↑中)
その緩やかな斜面に出ると立木もまばらで、野球が出来るほどの広場状の平坦地となる。ここには徳川家の家紋になったというフタバアオイの大群落がある。写真は広場越しに出てきたヤブを振り返ったところ。
林道との出合(↑右)
広場左寄りのトヨ状の道を反時計回りに回ったすぐの分岐を右に折れ、今度は時計回りに回る。次の分岐を左にヤブの方に入り御岳沢を渡ると間もなく、右にフェンスで囲まれたため池のような施設がある。あとは道なりに壊れた配管を横目に下ればすぐ林道へ出る。ここはもう西尾集落のすぐ上で、林道を右に25分ほどで妙義湖への車道へ出る。
 
注記
下降ルートの旧道は杉植林に寸断され、往時とは必ずしも一致していないと思われる。次々出てくるヤブの中の分岐をどちらに行くか見極めながら右へ左へうねうねと歩くことになるので、方向感覚を麻痺させないように要注意。1972年版エアリアマップでは紹介ルートよりやや東寄りに出るようで、帰りの林道では横断するそれらしい道もあった。
尚、逆ルートは更に迷いやすいと思われるので薦められない。
 
新規追加  2003年 5月15日
 
HOME       BACK