裏妙義/釜ヶ沢より御殿の風穴

最終更新  2014年 3月27日
鶴峯山より御殿の風穴
鶴峯山より御殿の風穴

裏妙義の玄関口、木戸の双璧として既紹介の鶴峯山と対峙する見晴らし尾根に「御殿」がある。

御殿全体は麓からの直登を許さない複雑怪奇な壁と岩稜に囲まれるが、その一つの稜に風穴(かざあな)があるのを知る人は少ない。下界からはそれと分からず(参考)、山中からも確認するにはごく限られた範囲に限定されるからである。今回、その風穴に妙義湖畔から東面深く駆け上がる釜ヶ沢(山と高原地図では別名)出合より目指す。そのルートはまさに妙義バリエーションの面目躍如!

妙義の岩とヤブに慣れた熟達者のみに許されたルート。岩経験者向け。

 

グレード(個人評価)  H  1  2  3  4    U  /  判断基準
ルート 釜ヶ沢出合→二俣→風穴稜→大楓→核心部→御殿の風穴(往復)
総歩行時間(休憩含まず) 登り約3時間  下り約2時間
登山適期 4月上旬〜5月上旬 及び 11月
地形図 南軽井沢
駐車場所 釜ヶ沢出合前駐車スペース2〜3台/その他妙義湖畔に多数
注  記 懸垂下降&岩装備必須!
高度なヤブルートファインディング必須!

 

登山日 : 2011年11月27日
登山口 釜ヶ沢下流
釜ヶ沢出合は幅3mほどと狭い。
今は灌木に覆われた堰堤工事用林道があり登山口となる。出合から60〜70mで堰堤を越え、スラブとゴーロの間を登り始める。
 
二俣
ゆっくり15分ほどで二俣着。
右が本流のF1/5m、左は支流。両滝の間の尾根が今回の登路「風穴稜」。
 
F2右岸 登路の尾根末端より
本流F1を登ると上はF2滑滝の釜。
ってことで、左写真のF2釜横右岸をやや強引に登り、右写真の風穴稜に乗る。登る北斜面は滑りやすく立木も疎ら。滑り落ちると釜にドボーン! っとウォーターシューーーーートゥ!!

急峻な釜ヶ沢は洗われてスラブ状の岩盤をスプーンで削り取ったような滝が続き、法面も手がかり少なく巻くのも困難な場合が多い。行き詰まる可能性大で遡行には向かない。それでも夏なら楽しい水遊びも出来そうだが・・・・ヤマヒルが・・・・^^;
 
左を巻き 右を巻き 中央突破
風穴稜は5〜6個所ほどの岩コブや岩場が次々現れ、左に巻き、右に巻き、時に中央突破も・・・・
 
大楓
やがて地図上の700m(690m)平坦部に乗ると、その奥で直径1mくらいの大楓に迎えられる。核心部はここから。

140327
この大木、写真上部に楓の葉が写り込んでいたため大楓としていましたが、それはどうやら隣の木で、正しくは楢(ミズナラ?)と思われます。そりゃ木肌だって違うよね ^^;^^; 最後から2番目の写真と共に訂正致します m(_ _)m
 
核心部1
核心部の直登は困難!
一旦右の支稜にトラバースし回り込むと、感覚的には垂直の半岩、半草付きの壁となる。遠くいかにも怪しそうな灌木など頼りに登るが、枯れ木も多くかなりきわどい。技術的には大したことないけど、よ〜く観察してから手足をのばしましょうね!
写真は下降時だが、登るには登れても下降は懸垂でないと安全を保てません。キッパリ!
 
リッジ上より目標の岩峰
登りきると爽快な薄い灌木のリッジ。
初めて目標付近の岩峰が見えてくる。眼前は足下からぐるっと時計回りに垂直にえぐり取られた壁で、沢側からのアプローチは困難。
 
核心部2−1 核心部2−2
リッジを登り上写真の岩峰を直登する核心部その2!
こちらも感覚的には垂直の壁。それでも左写真のバンドがあったり右写真のスタンスとなる岩塊があったりで、さっきよりは楽。ノーザイルでも下れるがこちらも信頼おけない灌木が多く、もちろん懸垂の方が安全。万が一落ちると・・・・上写真参照!
 
リッジ上より御殿と風穴岩峰
再びリッジ上に出ると大迫力で御殿が迫ってくる。
目指す風穴は左岩峰下。
 
風穴へのトラバース点 見えてきた風穴
先の岩峰基部までリッジを登り、左写真の立木を目印に獣道を右下に下りていくと・・・・見えてきました風穴 (^_^)v
 
風穴より登路側を振り返る
登路側を振り向いて風穴を見る。
写真の左奥から辿り着く。Uターンして右に登っていくと岩塊上の見晴らし。
 
風穴
風穴は幅10m弱、高さ5〜6mくらいのドーム形。
立木向こうの遠景には赤城・榛名が霞む。
 
鮮やかな紅葉
もみじ、かえで、一部ツツジの仲間はこんな遅くまで紅葉が楽しめる。薄雲越しながら弱い逆光にひときわ鮮やか!
 
天井
見上げる天井の厚みは・・・・5mくらいかな?
 
見晴らし側より見下ろす
見晴らしへの登路から見下ろす。
これまでの写真でも分かるように、風穴の中央には1本の栂の木がまるで門番みたい。
 
以下、見晴らしより展望三題
金銅山
表妙義・金銅山/鷹戻し付近の垂壁と西洋城郭のような星穴岳が印象的
いつも思うけど、この写真ばかりでなくどこから見ても(たとえば相馬岳とか)西岳って高いよね〜・・・・
標高点ないし最近登ったこともないけど、ひょっとして表妙義一?・・・・かしら?!

艫岩と赤岳
荒船山艫岩の向こうには八ヶ岳の主峰赤岳

鶴峯山から烏帽子岩
左から鶴峯山と風穴尾根、中央奥に谷急山、手前に軍艦岩、右に高く烏帽子岩
 
風穴の門番栂に古いスリングが1本巻かれていて、その主は南面に懸垂したものと思われる。しかし南面はトップ画像でも分かるように標高700m以上は絶壁が続き、安全地帯まで3ピッチは要すと思われ途中確実な支点が得られるかも上からは見えない。更にその後の下降もかなりの困難が予想され、筆者の経験上薦められる下降ルートとは言い難い。ピストンとはなるが登路を忠実に戻った方がいいだろう。

もちろん釜ヶ沢下降は不可。一部支流の源流は緩く一見下れそうだが、地図を見れば中流域の状況は容易に想像できるだろう。無駄な時間を費やすばかりとなること請け合い!
御殿東面の沢やその支流はいずれも短いが急峻で嫌らしい。同じ中木川支流でもそれなりに奥行きある籠沢(烏帽子沢左右、赤岩沢)や谷急沢などとまったく異なり、岩質も違う別タイプ。遡行しても最後は絶壁で尾根には届かず、下るにも適した沢は知る限りない。

逆に風穴稜を御殿まで登りきることもまず困難。御殿の東壁はそう甘くはない。深いギャップがあることもトップ画像で分かるだろう。

今回、人の痕跡は先のスリングを除きまったく無かったが、ルート全体を通して巧みに誘導してくれる獣道と主にシカの糞が各所にある。さすが山の先住民にとっては生活道であり、ほぼすべての岩場に巻き道が見つけられた。但し、彼らにとって登るのは目的ではなく多くは水平面の巻き道であり、登りに転じる見極めがこの種のバリエーションでは醍醐味でもある。

もう一つついでに、風穴でDocomo携帯はアンテナ3本立ちでまったく問題なく使用可能。風穴全体写真にある赤城・榛名の遠景とは前橋・高崎・安中方面でもあり、他メーカーも期待は持てそう。
 
 
御殿東稜より核心部
対岸御殿東稜より核心部
 
 
山野草
風穴で見つけた山野草です。
名前を御存知の方がいらっしゃいましたらお教え下さい m(_ _)m
肉厚の葉全体に高山植物のような綿毛を纏い、株の直径6〜7cm程度と可愛いものです。このまま花を咲かせるとも思えず、ロゼット状態で冬越しするんでしょうね。ハハコグサの仲間かなー? 気になりました (^^)
 
R18からほんの100mくらいの区間、風穴の見える位置がありました。駐停車できる場所じゃないし運転者の脇見運転もまずいけど、助手席にでも乗ったら観察してみて下さい。星穴を見ていたら・・・・ほらっ!
 
新規追加  2011年12月 1日
 
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